研究者としての評価の指標になる1つが「いかにそれまで研究を発表してきたか」です。
どれだけ研究としての成果をあげたとしても、その研究内容を発表できなかったとすればほかの人はそれを生かすことができません。そのため、学会発表なり論文なり、発表することで初めてその研究をもって貢献することにつながります。
また、もう少し強い言い方で、研究を行う上で発表することは、研究者の責務であるというとらえ方もあります。
どの分野でも、研究を1人で行うのは難しいです。医学であれば患者さんに協力していただいたり、研究費をもらっている場合はその費用を負担してくれている人がいます。
負担をしてくださった方々、そして社会に対して研究を公表するのは義務である、という考え方から、アメリカでは、NIHの研究費を受けた論文はPubMed Central(PMC)を通じて公開する、という動きができつつあります。
このように、研究者として研究内容を公表していくのは研究を行う上で重要な要素となっています。
それを網羅的に行うためのツールとして、研究者プロフィールを作成する、という方法があります。
研究者プロフィールは、自分が発表した論文や学会発表を公開するためもウェブサービスです。
本サイトでは、研究者プロフィールを作成できるサイトとその特徴をご紹介したいと思います。
業績公開ができるサイト
研究者プロフィールを作成できる主なサイトとして、以下のようなものがあります。
- ORCID
- Google Scholar
- Researchmap
- Web of Science Author Profile
- Scopus
- ResearchGate
どれも無料で登録可能になっています。
これらの特徴を図表にしてみました。
これらのサイトについて、登録方法や特徴をご紹介したいと思います。
研究者として必須のサイト
ORCID
ORCIDは、Open Researcher and Contributor IDの略称であり、上記サイトに登録すると、論文やグラントなどの業績のみならず、自らの学歴、職歴のプロフィールを作成することができます。
また、登録すると研究者ごとにORCIDのIDが割り振られます。
これは研究者独自のマイナンバーのようなもので、同姓同名の研究者や姓が変わった研究者が同一人物であることを示すIDとなります。
近年、このIDを有することが必須となっているジャーナルも増えてきており、研究者としては登録が必須ともいえます。
日本人に特におすすめな2サイト
Google Scholar
誰しもが知るGoogleが提供する業績登録サイトであるGoogle Scholar(グーグルスカラー)は、自らが発表した論文を一覧にできるサイトになります。登録にはGoogleアカウントと、別個に病院やアカデミアで利用しているメールアドレスが必要です(UMINのアドレスでも大丈夫です)。
Google Scholarの特徴は、一度研究者としてのアカウントを作成すると、論文を発表し、Google Scholarで検索可能になると、自分の業績リストに自動でその論文を登録してくれることです。つまり、自分で登録する手間がほとんどありません。
また、Google Scholarで通常通り検索した時と同様、その論文が何回引用されているのかを自動で集計してくれます。
このサイトが日本人にお勧めである理由は、業績として日本語の論文も登録できる点です。
特にJ-stageに収載される論文はすべてGoogle Scholarでも検索できるようになるため、J-stageに収載される業績はすべてGoogle Scholarに自動で登録できるようになります。和文でも自動で登録され、被引用回数まで自動で集計してくれるサイトはGoogle Scholarのみです。
Researchmap
Researchmap(リサーチマップ)は科学技術振興機構が運営しており、主に日本の研究者向けに開発されている業績公表サイトです。
研究業績のみならず、学歴、職歴、所属学会や科研費取得状況なども網羅的に登録できます。
本サイトの特徴として、科研費の評価の際に用いられることが挙げられます。現在は自動で紐づきませんが、e-Radの研究者番号と連動します。大学によってはすべての教職員にResearchmapのID取得を義務付けているところもあり、日本で研究をするにあたりほとんど必須ともいえるサイトとなっています。
また、日本のサイトではあるものの、日本語と英語での両方の表記が自動で作成できるため、海外からのビジビリティも高いように思います。
Pubmed, ORCID, Web of Science, Scopusなどから論文を業績に簡単に追加できる機能もあり、使い勝手もよいです。
登録に際しては研究者番号が付与されている場合には自動で可能ですが、付与のない学生や大学・国立研究開発法人に所属がない方は、Researchmapへの直接申請ないしすでに登録されているユーザーからの招待が必要になります。
直接申請する際はすでに発表された論文を示す必要があります。まだ論文発表の経験がない場合には、招待で登録可能です。登録基準として「緩い意味での研究者」であることを求められますが、今後学会発表や論文発表の意思がある方は該当すると私は考えて招待を送っています。
私自身は学生さんに対しても招待を送ったことがありますし、私自身学生のころに発表した論文を業績として記載し申請しましたが、いずれも無事アカウントの作成につながっておりますので、学生さんでも積極的にアカウントを作成していただいてよいかと思います。
大手データベースと連携している2サイト
Web of Science Author Profile
Web of Science Author Profileは、論文、査読双方の業績を管理できるサイトです。論文のみならず査読も登録できる点が特徴となっています。
さらに、Web of Scienceに収載されている論文であれば、WoS内でどれだけ引用されているか、などが表示されます。WoSはClarivate社が運営しており、同社から発表されるImpact Factorなどが業績として求められることもあるため、それらを調べるために便利なサイトとなっています。
ユーザー登録としては、Web of Science, Researcher ID, EndNoteと共通のアカウントで利用できるので、Endnoteをすでに利用されている方は改めて会員登録をする必要はありません。
WoS内の論文のみならずORCIDからの引用、DOIからの登録も可能であるため、和文論文も登録自体は可能ですが、引用数などは表示されません。
Scopus
Scopusは大手学術出版社のエルゼビア(Elsevier)が運営するデータベースです。
こちらにアカウントを作成することで、Scopusに収載されている雑誌に掲載された論文の業績を表示できます。また、登録した論文はScopus内でどれだけ引用されたか、などが自動で表示されます。
エルゼビアのアカウントを保有していれば研究業績をまとめることができますが、Scopusへのアクセス権がないと業績の詳細を確認することができません。
また、ORCIDが同じでも論文投稿時の所属機関ごとに別人として表示されることがあるため、複数の研究者名に紐づけられたデータの統合を申請する必要が生じることもあります。
Scopusの特徴は、他人の業績に対しても追加の申請が可能である点です。
知り合いのアカウントが複数別人として表示されているのを見つけたら、その統合申請を気を利かせてしてあげる、なんてことも可能です。
少し手間が多くややこしいことも多いですが、Scopusを指定して業績確認がされる場合もあるので、可能であれば登録しておきましょう。
SNSに近いサイト
Researchgate
Researchgateは研究者のSNSサイトに近い業績公開サイトです。
はじめは論文タイトルを入力するスタイルでしたが、一度登録すると勝手に自分の論文を探してきてくれて、新しい論文を出すと「この論文、あなたの業績に追加していいですか?」という通知が来ます。承認すると、自分の論文として業績に追加できます。
SNSとしての特徴は、論文のPDFを送って欲しいという連絡を、Researchgate内のチャット機能で送ることができる点です。PDFへのアクセス権がない場合、どうしても欲しければCorresponding authorにメールを送ったりしますが、かなりハードルが高い…
でも、Researchgateであればそれをワンクリックで完了できちゃうんです!
その他に面白い機能として、タイムラインに自分の興味のありそうな論文が表示されます。意外と関連のある論文が出てきて勉強になります。逆に、自分の論文が他人のタイムラインに流れる可能性もあるので、アクセスの向上も期待できます。
英語のSNSなので、和文論文とは相性が悪いのが難点です。
アプリもあるので閲覧するだけでも面白いですよ。
研究業績を公開しよう
今回は業績登録ができる主なサイトを紹介しました。
どちらも会員登録をすれば業績を収載できるように誘導がありますので、ポチポチ登録を進めてみてください。
初めの登録は正直に言えば面倒なところもありますが、今後業績が増えればその手間はさらに増えますので、思い立った今、ぜひ業績登録を済ませてしまいましょう!
これらの業績登録は、研究費の申請やジョブハンティングにも役立つことがあるので、ある程度こまめに登録情報を更新することがお勧めです。