COVID-19に対し、日本の医学生はどう対応したのか?

2020年11月、日本熱帯医学会、日本国際保健医療学会、日本渡航医学会、国際臨床医学会の4つのグローバルヘルスに関連する学会が合同で「グローバルヘルス合同大会2020大阪」という大規模な学術集会を開催しました。

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その中のシンポジウムで、4学会合同の学生シンポジウムを実施する機会があり、企画者と共同座長を務めました。企画者、登壇者は全員学生でしたが、オーディエンスの教員陣と様々なディスカッションができ、個人的にはとても興味深いシンポジウムでした。その内容を共同座長の山崎氏とともにまとめ、発表したのが本原稿にあたります。

引用論文

Yamasaki, L., Saeki, S., Kido, H. & Suzuki, T. Medical students in the midst of COVID-19 -Report of the joint student symposium in the Joint Congress of Global Health 2020 in Osaka. Kokusai Hoken Iryo (Journal of International Health)35, 265-266, doi:10.11197/jaih.35.265 (2020). (equal contribution, correspondence)

(リンクで論文先に飛べます)

要旨

グローバルヘルス合同大会2020の学生シンポジウムでは、日本からの医学生3名と、海外からの医学生2名にコロナ禍での現状について語っていただきました。そのあと、みんなでコロナをどう乗り越えて、どんな活動をしていきたいかという話をしていきました。

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ビラは共同座長の山﨑さんが作ってくれました!大活躍!

シンポジウムの内容を淡々と述べるとこれくらいのところにまとまります。

面白かったのは、今回のセッションではディスカッションをほぼすべて英語でやり切ったこと、そしてフロアからの質問が興味深かったという点にあります。

学生セッションと銘打ちながらも、オンラインを経由して幅広い年齢層と意見を交わすことが出来たこと、今後のグローバルヘルスについて吟味することが出来たのは一定の意義があったのではないかと考えます。

また、今回のセッションで浮き彫りになったのは、各大学のコロナへの対応の違いです。このセッションで登壇した各人はそれぞれユニークな取り組みをしていたためかなり色が出ていましたが、それを抜きにしても大学によって実習再開のタイミングや方法には差があった。今までは共通カリキュラムの中である程度全国的に均一性をもって保たれてきた医師育成のための教育の質が一律でなくなったのではないか?という印象がぬぐい切れずにセッションは終わりを迎えました。

書けなかったこと・言えなかったこと

今回の学生セッションは、ある意味かなり濃厚な内容になりました。本来であれば各学会の学生部会がそれぞれセッションを設けるようなイメージもあったくらいだったが、学会自体がオンラインになったことなどを踏まえて、一大合同シンポジウムが開催される運びとなりました。

でも、それは結果的に、いろいろな側面からこのパンデミックを切り取ることが出来たともいえます。

色々な医学教育の文献を見ていて思うのは、あくまで文献自体は教員側からの視点で書かれたものが多く、実際にその中で医学生はどう苦労したのか、どのような影響があったのか、はたまたそれが何から起因したのか、という点についてはあまり語られていませんでした。そのような意味で、今回はシンポジウムのみならず文献として学生の視点を記録できたのは有意義であったのではないかと感じています。特に日本国内の医学教育の状況について報告した英語論文はほとんど見つからず、奇しくも重要な新規性をもつ文献を作り上げることが出来たのではないかと考えています。

また、正式な報告書を出す場がなくなってしまったので、今回の論文は本シンポジウムの報告書にかわる役割も果たしてもらっています。

私は今回のシンポジウムの企画者のみならず、ありがたいことにグローバルヘルス合同大会2020全体の運営委員もさせていただいていた。その当時の役割は学生参加者が関連する企画統括だったが、寂しいかな学生主体で開催されるイベントがこのシンポジウムのみとなってしまいました。そのため、私にとってはこの論文が採択、発表されることが一連の業務の総まとめにもなったともいえます。

この論文では責任著者を務めさせてもらったが、そのほかの著者3名はこの企画の早期段階からともに計画を立てて仕事をこなしてくれた優秀なメンバーたちです。改めてこの場でその貢献に感謝し、また皆さんの初めての論文発表をお祝いしたいと思います。

このメンバーとまたいつか一緒に仕事ができるのが楽しみです。

いつか対面で打ち上げしたいですね~。

ちなみにですが、このシンポジウムを受けて幾つかの論文が発表される予定になっています。このシンポジウムがいろいろなイノベーションの源泉となってくれたなら、企画者存外の喜びです。

続報に乞うご期待!

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