パンデミックによるSNSは諸刃の剣。若年世代への上手な働きかけを。

前回、一緒に論文を書いていただいたロンドン大学(University College London)医学部医学科の島戸さんと一緒に、またレターを書きました。

今回のレターは、WHOが2020年12月に言及していた “Infodemic”に対するコメントです。

引用論文

Saeki, S. & Shimato, M. Combatting infodemics for a sustainable healthcare system. Japanese Journal of Public Health advpub, doi:10.11236/jph.21-018 (2021).

(リンクで論文先に飛べます)

要旨

WHOによれば、Infodemic(インフォデミック)とは「健康に関して(良くも悪くも)影響を及ぼす情報」のことを指すそうです。単語としては「情報病」くらいがいい訳かなぁと思ったりもしましたが、これだと少し語弊を招きそうな印象ですので、やっぱり翻訳って難しいですね。

さて、今回のパンデミックでは、やはり様々な情報がSNSで拡散されました。日本でもトンデモ医療が拡散されていたり、自粛警察の活躍(?)などがあったりもしましたが、海外でも似たような事例はたくさん起きていたらしいですね。例えばですけど、一時期効果があるかもしれない!と言われていた薬の中に「ヒドロキシクロロキン」というものがあるのですが、熱帯魚を飼うための水槽に入れる消毒剤みたいなものの中にクロロキンという似た成分が入っていることがネットに出回って、それを口に含んだ患者さんが中毒症状で搬送された、みたいな情報を聞いたりしました。海外の例ですが。ちなみにですが、いまのところこの薬がCOVID-19に対して有効であるという情報はなさげです。残念ですね。

ですが、やはり、このようなよくわからない情報でも、恐怖を感じる中ではすがりたくなったりするものです。なので、恐怖を拡散しないことも大切であったりします。また、これは環境破壊に関する調査で明らかになったことなのですが、人は、周りの人たちが信じている情報を信じたくなり、一度信じるとそれ以外の情報源から説得するのがかなり難しくなるらしいのです。

となると、SNSってとても怖い。どの情報が正しいのかわからない中で、誰しもが自由に発言できるわけですから。何を信じればいいのか?というところになってきます。

しかし、だからと言って諦めてしまうとそれは本末転倒だと思うのです。しっかりと正しい情報を発信し続けることで、響くところには響くと信じるしかありません。

特に若年世代にとってSNSを利用した啓蒙は、新聞などのメディアと比較して極めて有用であろうと思われます。若年世代こそ未来の社会を作り上げるわけですから、この層にアプローチしない手はない。むしろ、この世代にしっかりと正しい情報共有ができれば、未曾有のパンデミックに対しても今後、よりうまく対応できる社会を構築してくれるかもしれない。

そう期待して、SNSを忌避するのではなく、活用することも考えませんか?と問いかけた論考になっています。

書けなかったこと・言えなかったこと

今回の論文は、島戸さんにとっての初めてのPubmedデビュー作になっています。おめでとうございます!私も1年前にPubmed掲載論文があったらまたもっと見たり考えたりすることも変わっていたのかな、なんて思ったりしなくもないです。(笑)

結局今回はInfodemicというホットなトピックに乗じたわけですが、何が言いたかったかというと、「今のリスコミ、ちょっとまずいんじゃない?」「若年世代をあまりにも無視していないかい?」というところをにじませたかったということにつきます。

まぁ、Infodemicについて日本人で書いているのは私たちくらいだと思うので、Hot Topicと言い切れるかどうかは微妙なところかもしれませんが(笑)
でも、多くの医療従事者や公衆衛生の専門家が、その爆発的なポテンシャルに気が付いたところではあったのかな、と思っています。

特に日本では、どんな組織であっても若年世代が意思決定にかかわる機会はあまり多くありません。ですが、第3、第4回の感染拡大フェーズの中の感染者の多くが若年世代で占められていることからもわかるとおり、この世代を無視して社会を運営することは無理なのです。ここに有効なアプローチをしない限り、うまく収められるものもおさめられない。選挙にいっていないからって無視し続けられる層ではないことは改めて強調されて然るべきかな、と思っています。

苦しいお願いをするときのリスコミは、やはりハードルが高いです。
でも、避けては通れない道です。
ならば、みんなで協力してやるべきなのでは?とも思います。
未来の社会を構築する若者に、今こそより良い社会のために一肌脱いでもらうよう、協力を仰ぐことも必要になってくるように思うのです。

私たちを無視しないでほしい、という一つの声として受け取ってくれる方が1人でもいらっしゃればうれしいです。

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